(資料)高千穂の地層と化石


岩戸地区の石灰岩の地層
 岩戸地区には古生物化石を多く含んだ石灰岩層が露出している一帯があり、地質学・古生物学の分野では日本屈指の調査地として知られた場所です。まだ世界の大陸がひとかたまり(パンゲア大陸)であった2億5千年前の頃、外洋の離島の浅海に由来する石灰岩層が地殻の移動に伴って日本列島に到達したものと考えられています。これらの地層からは、浅い海で生息したフズリナ、サンゴ類、貝類などの化石が見つかります。
 なお、この地層の露出地帯は私有地ですので、地権者に無断での立ち入りと採集はご遠慮ください。

【参考文献】
 宮崎県高等学校教育研究会理科・地学部会編 「宮崎県地学のガイド」 コロナ社、1979年


岩戸のフズリナ化石が語る「史上最大の生物大絶滅2段階」説
 地質年代では、古生代末期の二畳紀(ペルム紀)とその次の中生代初期の三畳紀との境を「P/T境界」(約2億5千万年前)と呼び、この前後で出土する化石生物の種類と数が大きく変化することが知られており、このころに「生物の大絶滅」が起こった、と考えられています。
 「生物の大絶滅」は、恐竜の絶滅が有名です。中生代白亜紀に繁栄していた恐竜などの大型は虫類などが、突然絶滅してしまい、続く新生代第三紀はほ乳類が繁栄する時代になりました。これは「K/T境界」(約6500万年前)と呼ばれています。しかし、「P/T境界」前後の大絶滅は死滅した生物種の多さから、その規模は「K/T境界」での大絶滅を遙かにしのぐ、生物史上最大級の大絶滅であったと考えられています。
 中国・アメリカなどでの化石の研究から、この「P/T境界」頃に発生した「大絶滅」は2段階あったのではないか、と考えられていました。しかし、それらが全て当時ひと塊りだった大陸(超大陸パンゲア)の沿岸に由来する地層であった事から、全地球レベルの現象と言えるのかどうかが課題とされていました。
 東京大学大学院の磯崎行雄教授と太田彩乃さんらは、岩戸地区の石灰岩層を調査し、フズリナ化石の種類の変化から、「P/T境界」附近にやはり2段階の大絶滅(2億6千万年前と2億5千万年前)があったことを確認しました。この地層が当時の大陸から遙か離れた外洋(超海洋パンサラサ)中央に位置した浅海に由来することから、2段階の大絶滅が当時全地球レベルで生じた現象である事を世界で初めて証明したのです。

【参考文献】
太田彩乃・勘米良亀齢・磯崎行雄(2000) 「宮崎県高千穂町上村のペルム系岩戸層および三田井層の層序:海山頂部相石灰岩中に確認された茅口階、呉家坪階および長興階」 地質学雑誌、106巻12号
磯崎行雄・太田彩乃(2001) 「超海洋中央部での古生代末大量絶滅事件と浅海環境の急変−海山頂部相中・上部ペルム系石灰岩の生層序および岩層序−」 地学雑誌、110巻3号

   
岩戸層と三田井層の境界(大字岩戸字上村)   大字下野字聖川のフズリナ化石

黒嶽林道の東京大学調査地点の看板    


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