高千穂周辺の神楽写真ギャラリー「大菅神楽」(2007)


日之影町 大菅神楽 平成19年12月8日〜9日 於:大菅公民館

No. 演目 人数 内容 JPG
すがもり通し 全員 14:59、みだれ太鼓にのせて、鬼の目かずらを二人で持ち、神職のお祓いを受けつつ、奉仕者・世話人・舞道具・宿の主人ら、かずらの中を三回ずつ通して清める。

『すがもり証議
きん上さいへいとわ おのこのたまのめしよの ますみの鏡の祓う くもはないとわ きん上とわ さいへいとわ さいわいとわ てんよりも てんこ給わりて みな人のよしとゆうわ おにのべつこの人ぎよう 一 二 三 四 五 六 七 なくせのせん すがもりを とうときわ 祓い給へ清め給へ』

大菅神社へ移動 全員 徒歩で移動。神輿や太鼓など大道具は軽トラックで移動。
大菅神社で神事 全員 15:30。かつては舞殿があって宮でも神楽を行っていたそうだが、台風で舞殿が壊れてしまったので宮では社を時計回りに3周。御神酒上げあり。

道行き(みちゆき) 途中で、正一位稲荷神社の御神体の神輿も合流し、徒歩で移動。
祝子元(ほりもと)での神事 16:14〜16:28、途中、祝子元(ほりもと)の緒方年秋氏宅に立ち寄る。御神酒上げあり。

舞入(まいいれ) 全員 16:32〜16:37、神庭まで綾(神の道)が敷かれる。
鎮守(ちんじゅ) 16:52〜17:16。御神屋を清め、神々の鎮まりを願う舞。4名の子供が舞い、この年は女の子が1名入って舞っていた。

鎮守
太鼓『お空を見上げておがめばよ 神下るいかにや氏のよかあとかるらん。』
太鼓『はやもそもそも。』
太鼓『みこそこの世の宝をようちふれば かのこのかわよもよねとこそなる。』
太鼓『はやのたてやねぎそこたちたまえよ。』
舞手『たてばこそねぎがたもとによ御幣とどまる。』
先舞『注連引けばここも高天のよ原よただ 集まり給え萬よの神。』
先舞『はやのうれしさに我はここにて舞い遊ぶ すまどもあけずみすもおろさず。』
後舞『今日の氏のごきとさおしかよ 黄金の箱によ納めまします。』
後舞『はやのしめ柱雪のわた雲の両だるき あられはかえすよ風も吹きける。』
太鼓『はやのお空より御鈴給えて、』
舞手『我来たよ御鈴の主とは我をこそゆえ。』
太鼓『はやの御鈴立つもろばの山も、』
舞手『我ゆけばだいじなそこも御鈴とどまる。』
太鼓『はやの山川の木の葉の下の、』
舞手『たまり水急いでも行く急がでも行く。』
舞手『うれしさに我はここにて舞い遊ぶ すまどもあけずーみすもおろさず。』


神降ろし(かみおろし) 17:18〜17:43。八百万神を御神屋に招き入れるための舞。

大菅神楽では、外注連のある方向を上座と考えているそうだ。そのため、「お客様は神様」状態で見学できる。ただし、デジカメのシャッターチャンスは突然訪れるので、あらかじめ練習できない。
外注連側の「えりもの」の配列は、神庭の中から外側を見て左から順番に「梅に鶯・梅に鶯・木・木・ウサギ・松に日・湯襷・鳥居・湯襷・松に月・梅鉢・梅鉢・弓矢・柳に鴛鳥・柳に鴛鳥」である。
お客から見て左側の「えりもの」の配列は、神庭の中から外側を見て左から順番に「梅鉢・梅鉢・橘・橘・ウサギ・松に日・湯襷・鳥居・湯襷・松に月・火・火・弓矢・柳に鴛鳥・柳に鴛鳥」である。
神棚側の「えりもの」の配列は、神庭の中から外側を見て左から順番に「梅に鶯・土・土・紅葉に雌鹿・紅葉に雄鹿・松に日・湯襷・鳥居・湯襷・松に月・ウサギ・弓矢・弓矢・柳に鴛鳥・柳に鴛鳥」である。
お客から見て右側の「えりもの」の配列は、神庭の中から外側を見て左から順番に「弓矢・水・水・柳に鴛鳥・ウサギ・松に日・湯襷・鳥居・湯襷・松に月・大笹にダマ・小笹にコマ・金・金・柳に鴛鳥」である。
雲は1本しか綱が無いため、八丁注連の下に45度の角度で設置されていた。外注連側の角から外側から見る形で左から順に巡ると、5枚づつ4面にあるが、「金・湯襷・鳥居・湯襷・松に日」「松に月・湯襷・鳥居・湯襷・松に日」「松に月・湯襷・鳥居・湯襷・松に日」「金・湯襷・鳥居・湯襷・松に日」である。ちなみにこれはあくまでも平成19年度の飾り方である。
※緒方森男氏によると、大菅神楽のえりものの解釈は、「穴があいている方が日で、穴がない方が月」とのことであった。

神庭だけでなく楽屋にも注連縄と御幣が飾られていた。神庭の注連縄は七五三の垂れが区切れなく全部垂れていて特徴的だった。(なぜ密度が高いのか?、八百万の神の意味なのか?は不明。)

神降ろし
『一、 東方にいまぞ拝みのらいはいをまいらするや。』
『一、 南方にいまぞ拝みのらいはいをまいらするや。』
『一、 西方にいまぞ拝みのらいはいをまいらするや。』
『一、 北方にいまぞ拝みのらいはいをまいらするや。』
『一、 中央にいまぞ拝みのらいはいをまいらするや。』
『一、 山川の木の葉の下のたまり水や急いでも行くいそがでも行く。』

神降ろし扇子
『一、 お空より扇子を給えて我来たよ 扇子の主とは我をこそゆえ。』
『一、 このところ中央六分におこなえばや たからのはてすも雨とこそふる。』






袖花(そではな) 17:45〜18:16。生産が豊であるように祈願し天地との縁結びをする舞。



夕食 全員 全員で夕食。うどん・ご飯・漬け物・柚子味噌など。
神事 全員 御神体の鏡はガラス張りになっているのは、煤屋を嫌う為兼防犯対策。
宮司さんは、昔は深角神社から来てあったそうで「深角系」となっている原因は宮司さんによるようだ。ちなみに平成19年度は大人神社から甲斐重成宮司が来られていた。

御神屋誉め(みこやほめ) 祭場を清め、暮らしの安全を祈願する太鼓唱儀。
雲降ろし(くもおろし) 4+1雲綱 19:54〜20:27。はじめ「とのぞろい」により、太鼓と舞手のかけあいがある。雲を東西南北に揺らし神々の降臨を喜ぶ舞。

とのぞろいのうた
『一、 このとのの よきもりところと ぢをほめて やしろをつくりて 神を招ぜん。
二、 このとのの みずぶのわきに よしうえて まいるとしやに よしとよましやる よしとよましやる。
三、 このとのの にわのひろぎの ひろでいし くこくのとびを まねきよせなや まねきよせなや。
四、 このとのの きどのおりめは ななおりめ 八重の折り目に 黄金はなさく 黄金はなさく。
五、 このとのの しんのたいしは ひわだぶき こがねのたるきに あやのぬいほこ あやのぬいほこ。
六、 このとのの しんのたいしは かねよただ おせどもおせども なびかざるらん なびかざるらん。
七、 このとのの いぬいのすみに はたたてて くこくのとびを まねきよせなや まねきよせなや。
八、 このとのの いぬいのすみなる かめのさけ かぜはふかねど さんさらなみたつ んさらなみたつ。
九、 このとのの あたらしどのどは たがもうす しらげのこめの ふるをこそゆえ ふるをこそゆえ。
十、 このとのの にわのひろきに はびろのうすを かさすえて くこくのとびの つきやどるらん つきやどるらん。
十一、 このとのの みなみおもての くわのきは もとよりよすれば うらわよりくる うらわよりくる。
十二、 このとのの みなみおもてに へいたるじかみのしめ よりくるかみは しめこえまします しめこえまします。
十三、 このとのの かみぜおぜ いせおいせ いせおぞまねく いせおふね かみかぜそろえて ふなこどもなる ふなこどもなる。
十四、 このとのの かみのちち いずくにまします ゆくまもり いずくにまいりて かみをしょうぜん かみをしょうぜん。
十五、 このとのの かみのはは いずくにまします ゆくまもり いずくにまいりて かみをしょうぜん かみをしょうぜん。
十六、 このとのの よきこまに よきくらせいては なるまだつ あさひにむかいて かみをしょうぜん かみをしょうぜん。
十七、 このとのの よきひとの ましますみちは ぢもゆるぐ こぐさもなびく りゅうのはやさや りゅうのはやさや。
十八、 このとのの たいどのとな おゆふのちわ おとなれや ななひろふねの よねのしたずみ よねのしたずみ。』





地固め(ぢがため) 20:27〜21:25。国造りの舞で、地霊をさまし集落の安泰を祈願する舞。

地固八ちょうし
『一、 神とうひろむる大空よりや はしぎつるぶちなにたててや はしぎつるぶちなにたててや。
一、 東には日月さやかに日を照らすや 西には夕鶴日をたもつや 西には夕鶴日をたもつや。
一、 日天やしろをおがむにわや 黄金のまさごをござとしてや それにぞ御恩はおりたまうや。
一、 妙見やしろをおがむにわや 黄金のまさごをござとしてや それにぞ御恩はおりたまうや。
一、 東山小松をさいわけ出でる月や 位はいつも有明の月 位はいつも有明の月。
一、 山川の木の葉の下のたまり水や 急いでも行く急がでも行く 急いでも行く急がでも行く。』








御初穂報告&煮染め配り 御初穂をされた人の名前を読み上げ、お礼。参拝者にお刺身とお煮染めが配布される。
幣神添(ひかんぜ) 2+1(入鬼神 21:34〜22:35。願成就の舞とも昇神の舞ともいう。入鬼神の参入あり。平成19年度の大菅神楽では入鬼神の登場後に「せんぐまき」があった。









武智(ぶち) 22:36〜23:24。戦いのための準備の姿を形象した舞。





10 本花(ほんはな) 23:35〜0:15。豊作を祈願する舞ともいい、縁結び成就の喜びを表す舞。




11 大神(だいじん) 3+1(入鬼神) 日の神を迎えた喜びを形象しているともいい、災厄鎮めの願神楽ともいう。熟練の古老舞。入鬼神は、「大神面を導入役が招く。」とある。







よながり 全員 1:23〜2:13。大神のおみきとして夜食。うどん・ご飯・漬け物・柚子味噌・鹿刺身・猪肉など。
12 七鬼神(しちきじん) 2:13〜2:26。「親神は六尺の鬼神杖を持ち、御子神たちの舞を批評し、忠告するという、親が子を鍛える風景を描いた舞。」という説明になっているが、平成19年度は親の杖が六尺より小振りだった。6人の子神が一斉に登場したので批評や忠告もなく追い出された感じだった。ほしゃどんが少ないので飛び入りの若者を使っていた。
13 太刀神添(たちかんぜ) 2:42〜3:15。太刀の威力により厄神を祓う舞。一人にて舞上げあり。

太刀神添ねぎたて
太鼓『お空を見上げておがめばよ 神下るいかにや氏のよかあとかるらん。』
太鼓『はやのお空より剣を給えて』
舞手『我来たよ剣の主とはよ われをこそゆえ。』
太鼓『はやの剣たつもろばの山もよ』
舞手『我行けばだいじなそこもよ剣とどまる。』
太鼓『はやのたてやねぎそこたてたまえよ』
舞手『たてばこそねぎがたもとによとらばもろでに。』
太鼓『はやの注連ひけばここも高天のよ』
舞手『腹よただ集まりたまえよ 萬世の神。』
太鼓『はやのうれしさに我はここにて』
舞手『舞遊ぶすまどもあけずよみすもおろさず。』
太鼓『はやの山川の木の葉の下の』
舞手『たまり水急いで行くも急がでも行く。』







14 八蜂(やつばち) 3:26〜3:30。大海を渡ってきた薬の神の舞とも伝え、あるいは宝物を入手した喜びの舞ともいう。太鼓にのって、身軽な技を披露する。

15 荒神(こうじん) 3:31〜4:25。屋敷祓いの舞ともいい、厄神祓いの舞ともいう。荒神と神主の問答がある。竈から竈祭の後、舞出す。




16 御弊(ごひ) 4:26〜4:57。火ノ神・山の神・水の神を祀る舞。入鬼神の参入がある。平成19年度は入鬼神を省略した。


17 岩くぐり 1(連れ出し)+4 5:00〜5:35。剣の舞。白刃を持ち、岩間の激流を形象しているともいい、剣力を用い厄神を祓う舞。先導役が連れ出す。「一人にての舞上げあり。」となっていたが、省略された。


休憩 ほしゃどん10名で夜神楽は大変である。余所からの応援や後継者養成などこれから検討する課題も多いと思う。
朝食 全員 6:15〜7:04。うどん・ご飯・漬け物・柚子味噌・鹿刺身・猪肉など。
番外 アドリブ 7:14〜7:16田植神楽の衣装を採物でアドリブ舞。ほとんどのほしゃどんが休憩中。
18 正護(しょうご) 7:24〜7:58。弓の正護ともいう。弓矢の威力により厄神祓いをする舞。弓を採り物に弓の手、矢を採り物に矢の手を舞う。
※平成19年度は普段は省略することが多い「素襖の手」も行っていただいた。

正護かみうた
『一、 八幡の矢先にかかるおんてきを 思うがままにぞいはらいにける。
一、 うれしさに我はここにて舞遊ぶ すまどもあけずよみすもおろさず。
一、 押方の二神山の麓にて 乳が岩屋のこだれそめちる。
一、 から竹に咲いてすだれる藤の花 花ふみ散らさず遊べうぐいす。
一、 春は花夏は橘秋は菊 冬は根笹にあられともしび。』







19 柴引き(しばひき) 7:58〜8:25。「岩戸五番」の序の舞で、天香具山の榊を岩戸前に飾り、天照大神の出屋を願う舞。

20 伊勢(いせ) 8:26〜8:55。伊勢の縁起を説き、格正しく舞う。岩戸開き序の舞。

21 手力雄(たぢからお) 8:56〜9:29。天地を祓い、天照大神を招き出す舞。

22 鈿女(うずめ) 9:29〜9:45。わざおきによって、天照大神を誘い出す舞。
23 戸取り(ととり) 9:45〜10:00。天岩戸神話を象徴する舞で、岩戸を開き、人の世に光明を呼び戻す力感あふれる舞。
※岩戸の注連縄を襷掛けする点は、岩井川系統の大人神楽などとの共通点である。岩戸の枚数は1枚。飛んでいく先は唱儀で言っていないので不明だった。再度、師匠さんにお尋ねする必要がある。



24 舞開き(まいびらき) 10:00〜10:20。岩戸開きが叶い、天照大神の出座を喜び、両の手に月形日形をかざし、祝意を表す舞。
※通称「ひよこ舞」と呼ばれる天照大神役の子供が登場する点は、岩井川系統の大人神楽や尾狩神楽や黒仁田神楽、あるいは諸塚村の戸下神楽や南川神楽などとも共通する点である。


せんぐまき 岩戸開きの後のもちまきがあった。
25 注連口(しめぐち) 10:39〜10:54。「月と日の天地を現出した喜びの舞という。雲の下にて、月と日を継承した彫り物をかざしつつ、静かに舞う。」とあるが、月と日を持つ場面が省略された。


26 繰り降ろし 11:00〜11:20。楽屋の神々に感謝し、神々を送る準備の舞。鈴と「みどりの糸」を採り物に入れ替わりつつ舞う。

27 沖逢(おきえ) 11:21〜11:41。水の神を形象し、火伏せを祈願する舞。



28 山森(やまもり) 11:41〜12:00。山の神に豊猟を祈願する狩猟舞。
29 神戻し(かみもどし)=「火の舞」(ひのまい) 全員 12:05〜12:10。神楽成就を感謝し、神々を送る舞。雲綱を持ち、鈴と水場の道具(なべ・やかんなど)を採り物に賑やかに送り、神楽奉納を成就する。


神事 全員 平成19年度は、12:30終了。
平成19年度は省略 住吉(すみよし) 海の神舞で、海鎮めの舞ともいう。稲荷神楽とも称する。
平成19年度は省略 杉登り(すぎのぼり) 4+1(入鬼神) 神霊の宿る杉を讃え、神人共食の場の喜びを形象する舞。入鬼神の参入あり。
平成19年度は省略 田植(たうえ) 稲作の実りを祈願する舞。
平成19年度は省略 御神体(ごしんたい) 2+1(まぜくり役) イザナギ・イザナミ2神による増殖の儀礼を表す舞。酒漉しの舞ともいう。男装束・女装束(ともに適当)

※大菅神楽は、毎年12月第2土日行われます。およその日にちが決まっていますが、変更される場合もありますので、あらかじめ日程を確認してください。
※大菅神楽は、深角(ふかすみ)系神楽に分類されています。五ヶ瀬川北岸の岩戸系と五ヶ瀬川南岸の岩井川系が微妙にミックスした印象を受けました。
※33番中、4番が省略され、ほぼ29番が奉納されました。ほしゃどんが10名ほどしかいないので、朝方の休憩が待ち長かったのですが後継者が増えてくれることを願うのみです。皆様お疲れ様でした。
※手力雄と戸取りの後で赤ちゃん撮影会があった。泣く赤ちゃんがいるかと思ったら、誰も泣きませんでした。


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