上田原神楽 平成19年2月10日〜11日 於:今狩 戸高香氏宅
No. | 演目 | 人数 | 内容 | 命付 | JPG |
注連起こし | 14:07神庭や御幣などの準備が終了したので、太鼓を打つ。 今年の外注連は、庭をわざわざ拡張して作られていた。 今年は、地元猟友会の有志から本物の猪1頭が奉納され、外注連に置かれた。「山森」で「笹振り神楽」を行うとのことであった。 |
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宿へ集合 | 15:00宮へ行く前に神楽宿へ集合し、熊野神社まで自動車で移動。 | ||||
宮で神事 | 全員 | 16:00今年は、上田原地区のうち「今狩」小組が担当で、熊野神社で神事。 | |||
道行き(みちゆき) | 熊野神社から徒歩で道行き。 | ||||
舞入(まいいれ) | 16:55宿に舞い込む。外注連を時計回りに3回まわって神楽宿に入る。 | ||||
夕食 | 17:10舞手(ほしゃどん)と地区の役員の食事。 | ||||
1 | 御光家 | 1 | 神楽を行う社を建立する舞。太鼓小口の唱教。 | 不明 | |
2 | 彦舞(ひこまい) | 1 | 猿田彦命が天孫降臨のおのころ島に見立てた桝に乗って四方割りを行う。上田原地区では、東→西→南→北の順。 | 猿田彦命(さるたひこのみこと) | |
2 | 太殿(たいどの) | 4 | 神楽を行う社を建立する舞。今年の上田原地区の番付け表では、彦舞と太殿で2番にしてあった。 | 久久之遅命(くくぬちのみこと)・金山彦命(かなやまひこのみこと)・迦具土命(かぐつちのみこと)・水波売命(みずはのみこと) | |
3 | 神降(かみおろし) | 3 | 神庭を清めて神を勧請する舞。神降・鎮守・杉登の3番を「式3番」と言う。日神楽(昼に舞われる短い神楽)では必ず舞われる。 | 神漏岐命(かむろぎのみこと)【天神】・忍穂耳命(おしほみのみこと)【地神】・中筒男命(なかつつおのみこと)【海神】 | |
4 | 鎮守(ちんじゅ) | 2 | 神が社に降臨し鎮まり給うことを表現した舞。 | 大屋津姫命(おおやつひめのみこと)・■(=木+爪)津姫命(つまづひめのみこと) | |
5 | 杉登(すぎのぼり) | 2+1 | 神が神殿に杉を伝わって降臨してくる神楽。途中で入鬼神が入る。上田原神楽は入鬼神に尻付きがつく。入鬼神が入る前に「空柴」がある。 | 椎根津彦命(しいねつひこのみこと)・菟狭津彦命(うさつひこのみこと)・入鬼神は武御雷命(たけみかづちのみこと) | |
神事(しんじ)・直会(なおらい) | 式三番終了後の式典。上田原地区では、家主の挨拶の後、家主に感謝状授与式がある。 | ||||
6 | 袖花(そではな) | 4 | 猿田彦命が天鈿女命の袖を引いて導いたことから縁結びの舞と言われる。 | 天鈿女命(あめのうずめのみこと)・■(=木+爪)津姫命(つまづひめのみこと)・石凝姥命(いしこりどめのみこと)・木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと) | |
7 | 地固(じがため) | 4 | 国作りや田作りのために土地を堅固にする舞。最後に宝渡しの儀式がある。 | 天児屋根命(あめのこやねのみこと)・事代主命(ことしろぬしのみこと)・太玉命(ふとたまのみこと)・五十猛命(いそたけるのみこと) |
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8 | 幣神添(ひかんぜ) | 2+1 | 御幣(ごへい)を持って舞う。高千穂の方言では幣を「ひ」と発音する。上田原神楽では道化荒神が入る。 | 彦狭知命(ひこさしりのみこと)・手置帆負命(たおきほおひのみこと)・道化荒神 | |
9 | 沖逢(おきえ) | 4 | 海原より来る神を招ずる舞。 | 天村雲命(あめのむらくものみこと)・思兼神(おもいかねのかみ)・事代主神(ことしろぬしのかみ)・天穂日命(あめのほひのみこと) | |
10 | 太刀神添(たちかんぜ) | 2 | |||
11 | 住吉(すみおし) | 4 | 海神を讃える讃える神楽。 |
大綿津見命(おおわだつみのみこと)・中筒男命(なかつつおのみこと)・底筒男命(そこつつおのみこと)・表筒男命(うわつつおのみこと) | |
12 | 火の前(ひ のまい) |
4 | 火伏神楽。上田原地区は日月の透かし窓の開いた御幣で舞う。 | 不明。 | |
13 | 四人武智(よにんぶち) | 4 | 「鞭かざし」とも言われる。戦いの準備の舞とも、龍王の舞とも言われる。 | 不明。 | |
14 | 山森(やまもり) | 4+1+2 | 山の神に願を込めて山産物の豊作を祈り害をなすシシを退治する。上田原地区では、銃声(クラッカーの音)と共にシシが倒れる。 平成18年度は、地元猟友会から猪の奉納があり、猪の供養と豊漁を願っての「笹振り神楽」が奉納された。 |
青龍王・赤龍王・白龍王・黒龍王・黄龍王(=大山祇命)・シシ2頭 | |
15 | 柴荒神(しばこうじん) | 2+2 | 神人一体。神が柴に乗り村人に担がれ神庭に入り神主と問答をする。「御柴」にあたる舞い。 | 命付不明。 | |
16 | 弓正護(ゆみしょうご) | 2 | 弓の神威をもって悪魔を祓う神楽。 | 月夜見命(つくよみのみこと)・天日鷲命(あめのひわしのみこと) | |
17 | 地割(じわり) | 6 | 土地の割り替えの舞。「山の神」を神格化した荒神が、密教の三宝荒神と習合して、のちに竈神としての神格が残った。台所で竈祭を行い、舞い込む。舞手のほっぺたに「へぐろ」(=すす)が塗られる。途中、荒神さんの裾を女性が引っ張る「裾引き」がある。最後に荒神問答がある。 | 須佐之男命(すさのおのみこと)【荒神】・太玉命(ふとたまのみこと)【幣差】・武御雷命(たけみかづちのみこと)【太刀舞】・天児屋根命(あめのこやねのみこと)【神主】・月読命(つくよみのみこと)【弓舞】とあるが、若干人数が違う部分の命付は不明。 | |
18 | 五穀(ごこく) | 5 | 五穀(米・稗・粟・豆・玉蜀黍)豊饒を祈る神楽。餅やお菓子がまかれた。 | 倉稲魂命(うかのみたまのみこと)・大田命(おおたのみこと)・大宮売命(おおみやめのみこと)・保食神(うけのちのかみ)・大己貴命(おおなむちのみこと) | |
19 | 杵舞(きねまい)・御神体(ごしんたい) | 3 | 最初に杵舞いがあり、続いてイザナギ・イザナミ2神の国産みの舞。餅やお菓子がまかれた。 | 杵舞いの命付けは不明。伊邪那岐命(いざなぎのみこと)・伊邪那美命(いざなみのみこと) | |
20 | 本花(ほんはな | 4 | おめでたいご披露の祝いの舞。餅やお菓子がまかれた。 | 天鈿女命(あめのうずめのみこと)・石凝姥命(いしこりどめのみこと)・■(=木+爪)津姫命(つまづひめのみこと)・木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと) | |
21 | 岩潜り(いわくぐり) | 4 | 岩間を走る激流の意で、太刀をくぐる舞。 | 武御雷命(たかみかづちのみこと)・手置帆負命(たおきほひのみこと)・天目一筒命(あめのまひとつつのみこと)・天穂日命(あめのほひのみこと) | |
22 | 七鬼神(しちきじん) | 7 | 大国主神と子供神6人の合計7人の神が登場し、親神が子供神に舞を教える舞。親神は俵に載るが、安定性が悪かったのでこの年は一斗枡の上に俵を置いて載っていた。安全第一である。 | 大国主命(おおくにぬしのみこと)と子神六神 | |
23 | 武智神添(ぶちかんぜ) | 2 | 「鞭かざし」とも言われる。戦いの準備の舞とも、龍王の舞とも言われる。 | 弟橘姫命(おとたちばなひめのみこと)・衣通郎姫命(そとほりいいらつひめのみこと) | |
24 | 八鉢(やつばち) | 少彦名命が唐国より珍しい宝物や薬草を入手して帰国の途中、嬉しさのあまり船べりを叩いた喜びの舞。 太鼓の上で逆立ちをする。 |
少彦名命(すくなひこなのみこと) | ||
25 | 大神(だいじん) | 3 | 荒神の神威を大幣として表し、麻緒の力によって魔祓をして福を招来する祓いの力のこもった願神楽。最後に「三度の拝み」を四方と中央に行う。 | 矢房八郎拝鷹天神(やぶさのはちろうはいたかてんじん)・道反命(みちのたんのみこと)・伊勢津彦(いせつひこ) | |
26 | 柴引(しばひき) | 1 | 天香具山の榊を根ごと抜いて、岩戸の前に飾る舞。 | 太玉命(ふとたまのみこと) | |
27 | 伊勢(いせ) | 1 | 岩戸開きを迎える祓いの舞。 | 天児屋根命(あめのこやねのみこと) | |
28 | 手力男(たぢからお) | 1 | 天照大神が天岩戸に隠れているところを探り、天岩戸を開くために思案する舞。 | 手力男命(たぢからおのみこと) | |
29 | 鈿女(うずめ) | 1 | 天鈿女命が、天岩戸の前で調子面白く舞った舞。 | 天鈿女命(あめのうずめのみこと) | |
30 | 戸取(ととり) | 1 | 手力雄命が天岩戸を開き、岩戸を投げる舞。投げる場所は、平成18年度は「信濃の国戸隠嶽」と「日向の国小戸の檍ヶ原」だった。 | 手力雄命(たぢからおのみこと)。 戸取りの明神(ととりのみょうじん)とも呼ばれる。 |
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31 | 舞開(まいぎらき) | 1 | 天岩戸が開いた喜びの舞。舞の途中から、日月の鏡を手力雄命が持って舞う。 | 手力雄命(たぢからおのみこと)。 | |
32 | 注連引き(しめひき) | 4+1 | みどりの糸を持って舞う。途中で入鬼神が入る。上田原地区には繰下(くりおろし)のめくりが無いが、注連口と一連で注連引きとして行われている。 | 天児屋根命(あめのこやねのみこと)・天村雲命(あめのむらくものみこと)・天日鷲命(あめのひわしのみこと)・天帆負命(あめのほおいのみこと)。 入鬼神 |
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33 | 雲降(くもおろし) | 5 | 神楽33番のフィナーレ。雲から紙ふぶきが舞い落ちる。9:45終了。 | 神漏美命(かむろみのみこと)・手置帆負命(たおきほおいのみこと)・太玉命(ふとたまのみこと)・思兼命(おもひかねのみこと)・天児屋根命(あめのこやめのみこと) |
※上田原神楽は、毎年新暦2月10〜11日に行われます。建国記念日に建国まつりがあるため、観光客も多く訪れます。
※家の中でありますが、戸を開けたままのため、一晩中見るということは、寒さとの戦いです。防寒具を忘れずに。
※上田原地区では、今のところ三脚が禁止されていませんが、他の人に迷惑をかけないように見学しましょう。
※上田原公民館区には11の小組があり、1977年2月10日から11の小組で順番に回して開催しており、2008年2月10日は片平、2009年2月10日は中角、2010年2月10日は北の民家で行われることが決定しています。4順目になる2011年以降は、まだ小組も民家であるかも未定です。4順目ということは、11年×3順+(11−3)=41年ということで、2007−41=1966(昭和41)年に戦後廃れた神楽を復活したという計算になります。上田原地区は師匠さんのお墓に「願祝子」と彫り込むほど神楽を大事にされている地区で、復活されたことは大変喜ばしいことだと思います。
※今年は、33番中、20番も子供たちが活躍していました。後継者育成に対する大人達の熱い思いが感じられました。実際、子供が出ると親や祖父母も見に来るので地元のお客が多かったですし、余所の観光客も将来の後継者に拍手や御花を贈られていました。
※「山森」の中で「笹振り神楽」が行われましたが、高千穂神社の「猪掛祭」を彷彿させる映像でした。高千穂神社の笹は両手でしたが、今年の上田原の笹は1つでした。「民俗芸能は生き物だなぁ」と改めて思いました。
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